筆舌に尽くし難い、大変な感情のローラーコースターでした。
トップ10で唯一ミディアムでスタートしていたフェルスタッペンをフライホイールの問題で失い、もはや恒例となったヴェッテルのスピンに溜め息をつき、ライコネンの恐ろしいホイール脱落事件に絶句、優勝が見えていたアルボンが再びハミルトンと絡みスピンし、Hondaファンとしての一縷の望みを託したアルファタウリがクヴィヤトを失った時には怒りを抑えるのに必死。
しかしアルボンとの接触でハミルトンに課された5秒ペナルティーがランド・ノリスに表彰台のチャンスを与え、それをランドは会心のファイナルラップ——奇しくも前年のフェルスタッペンによるファステストラップ(1:07.475)と全くの同タイム――で掴み取りました。
何が起きたのか把握するのに数秒かかりました。
ランドがやったと気付いた時、その3位は今まで見てきたどのドライバーの初表彰台よりも尊いもののように感じられました。
Formula 1ファンの持つF1像をすっかり変えてしまった(と個人的には思っている)ランドは、コロナウイルスの影響でオーストラリアンGPが中止された後は自らを「フルタイムTwitchストリーマー、パートタイムレーシングドライバー」と称してインターネット上での活動でファンを楽しませてきました。
レッドブルリンクで表彰台が決まった後の "GG, boys" の無線が、ランドのキャラクターを真に表していると思います。
I genuinely have no words. Having so many highs and lows in this couple of hours has kind of broken my brain. I feel in love, disgusted, blessed, hyped, and grateful. What a day. I love @F1.#austriangp #f1 https://t.co/k0GCouDM1R
— 穂積浅葱 (@Asagi_Hozumi) July 5, 2020
Last Lap Lando
同じレッドブルリンクで1週間後に行われたスティリアンGPでも、ランドはファイナルラップで魅せてくれました。
「残り2周だ。シナリオ7、シナリオ7」の指示を受けたランドは、ターン3でストロールがリカードに仕掛けた強引なdive-bombを見逃さずリカードの前に出ると、そのままターン4へのブレーキングでストロールへの攻撃を開始。
ここでのオーバーテイクは叶わなかったものの、翌周の同じ場所で外から綺麗にストロールを捕えました。
アルボンとの接触でフロントウイングを壊していたペレスにハイスピードの最終2コーナーで追いつくと、慌てることなく接触を回避しながら最終コーナーでオーバーテイク。
ファイナルラップでの華麗なショーを見せたランドは、この2戦で "Last Lap Lando" の異名を取りました。
ランドのファンでいることは、なぜか小暮卓史選手ともブレンドン・ハートリーとも違う全く新しい感覚を作ってくれます。
第3戦ハンガリアンGPではスピルバーグでの勢いを失っていたように見えましたが、現在ドライバースタンディング4位のランド・ノリスがどのような2020シーズンを送るのか、リカードをチームに迎え入れる'21年以降どのようなキャリアを築くのか、今から楽しみで仕方ありません。
まずはランドにとって2回目のホームグランプリ、シルバーストンでのブリティッシュGPを見守ることにしましょう。